【税務調査対策】突然の連絡にも慌てない!中小企業が押さえるべきポイントと事前準備を税理士が解説

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「税務調査」――この言葉を聞いて、少なからず不安を感じる経営者様や経理担当者様は多いのではないでしょうか。「うちの会社にも来るのだろうか?」「もし来たら、何を見られて、何を指摘されるのだろう?」と心配になるかもしれません。

税務調査は、決して他人事ではありません。法人・個人事業主を問わず、事業を行っていれば、どの企業にも調査対象となる可能性はあります。

しかし、税務調査は法律に基づいた手続きであり、正しい知識を持ち、日頃から適切な準備をしておけば、過度に恐れる必要はありません。 むしろ、自社の経理体制を見直し、健全な経営を維持するための機会と捉えることもできます。

この記事では、中小企業の経営者様や経理担当者様が、いざという時に慌てないために知っておくべき、税務調査の基本知識、調査官がチェックするポイント、そして今日からできる事前準備について、分かりやすく解説します。

税務調査とは? 基本を知ろう

  • 目的: 税務署が、納税者の申告内容が正しいかどうかを確認するために行われます。誤りがあれば是正を求め、適正な課税を実現することが目的です。
  • 種類:
    • 任意調査: 事前に納税者の同意を得て行われる、最も一般的な調査です。通常、事前に電話などで通知があります。この記事で主に解説するのはこの任意調査です。
    • 強制調査(マルサ): 裁判所の令状に基づき、強制的に行われる調査です。悪質な脱税が疑われる場合に実施されます。
  • 対象になりやすい企業とは?: 特定の基準があるわけではありませんが、一般的に以下のような企業は調査対象になりやすいと言われています。
    • 売上や利益が急激に増減している
    • 同業他社と比較して、利益率や経費率などの数値に異常がある
    • 過去に申告漏れや不正を指摘されたことがある
    • 現金商売(飲食店、小売店など)
    • 海外取引が多い
    • 長期間、税務調査を受けていない
    • 新設法人(設立後数年以内)
  • 調査の頻度: 「3年~5年に一度」などと言われることもありますが、明確な決まりはありません。毎年調査が入る企業もあれば、10年以上入らない企業もあります。

税務調査の流れ(任意調査の場合)

一般的な任意調査は、以下のような流れで進みます。

  1. 事前通知: 通常、調査の数週間~1週間前くらいに、税務署から顧問税理士(または直接会社)へ電話で連絡があります。調査日時、場所、対象税目(法人税、消費税など)、対象期間(通常は直近3期分)などが伝えられます。
  2. 日程調整: 都合が悪い場合は、理由を説明し日程の調整を依頼できます(税理士に任せるのが一般的です)。
  3. 調査当日(実地調査): 通常、2~3日間行われます。
    • ヒアリング: 経営者や経理担当者に対し、事業内容、組織体制、取引の流れ、経理処理の方法などについて質問があります。
    • 帳簿書類の確認: 総勘定元帳、仕訳帳、請求書、領収書、契約書、預金通帳などの帳簿書類が詳細にチェックされます。
    • 現物確認: 在庫や固定資産の現物を確認することもあります。
  4. 調査終了・結果説明: 調査官が問題点や疑問点をまとめ、後日、税務署から指摘事項の説明があります。
  5. 修正申告または更正・決定: 指摘事項に納得できれば修正申告を行います。納得できない場合は、税務署側が更正(税額を増やす処分)や決定(申告がない場合に税額を決める処分)を行うことがあります。不服があれば、異議申し立てや審査請求を行うことも可能です。

調査官はここを見る!重点チェックポイント

税務調査官は、限られた時間の中で効率的に調査を進めるため、特に誤りや不正が起こりやすい項目を重点的にチェックします。

  • □ 売上:
    • 計上漏れ: 期末間際の売上、現金売上、副業や雑収入などが漏れていないか?
    • 期ずれ: 当期に計上すべき売上が翌期になっていないか?
  • □ 仕入・外注費:
    • 架空計上: 実態のない仕入や外注費が計上されていないか?
    • 期ずれ: 翌期に計上すべき仕入が当期になっていないか?
  • □ 人件費:
    • 架空人件費: 勤務実態のない親族等への給与支払いはないか?
    • 役員報酬: 期中で不当に増減額していないか?(損金不算入のリスク)
  • □ 交際費:
    • 私的流用: 社長や役員の個人的な飲食代などが含まれていないか?
    • 科目区分: 会議費や福利厚生費など、他の科目との区分は適切か?
  • □ 在庫(棚卸資産):
    • 計上漏れ: 期末在庫が正しく計上されているか?(過少計上は利益操作と見なされる)
    • 評価方法: 評価損の計上は妥当か?
  • □ 固定資産:
    • 減価償却: 償却計算は正しいか?耐用年数は適切か?
    • 修繕費 vs 資本的支出: 修繕費として一括経費処理したものが、資産価値を高める資本的支出(減価償却対象)に該当しないか?
  • □ 書類関係:
    • 契約書・領収書: 印紙の貼付漏れはないか?
    • 請求書・領収書: 形式的な不備(宛名、日付、金額、内容など)はないか?
  • □ 源泉所得税:
    • 徴収・納付: 給与や報酬から正しく源泉徴収し、期限内に納付しているか?
  • □ 消費税:
    • 課税区分の誤り: 課税、非課税、不課税、免税の区分は正しいか?
    • 仕入税額控除: インボイス制度に対応した請求書等の保存要件を満たしているか?

今日からできる!税務調査への事前準備・対策

税務調査で指摘を受けないための最善策は、日頃からの準備です。

  • ◎ 最重要:正確な記帳と証憑類の整理・保管
    • 日々、取引を正確に記帳し、それらを裏付ける領収書、請求書、契約書、通帳コピーなどを、日付順や取引先別など、分かりやすく整理・保管しておくことが基本中の基本です。いつでもすぐに提示できるようにしておきましょう。
  • □ 会計処理基準の一貫性を保つ
    • 勘定科目や処理方法を毎期一貫させることが重要です。むやみに変更すると、利益操作を疑われる可能性があります。
  • □ 社内規程を整備し、運用する
    • 旅費規程、慶弔見舞金規程、役員報酬規程などを整備し、その規程に沿って運用することで、経費の正当性を主張しやすくなります。
  • ◎ 税理士との連携を密にする
    • 日頃から顧問税理士とコミュニケーションを取り、会計処理や税務に関する疑問点はすぐに相談しましょう。決算時には、申告内容について税理士から説明を受け、自社の状況をしっかり把握しておくことが重要です。
  • □ 帳簿書類の電子化とバックアップ
    • 電子帳簿保存法の要件を確認しながら、帳簿書類の電子化を進めることで、管理・検索が効率化され、紛失リスクも低減できます。データのバックアップも忘れずに行いましょう。
  • □ 異常値の説明準備
    • 前期比較や同業他社比較で、売上総利益率、交際費率、減価償却費などに大きな変動や乖離がある場合、その理由を明確に説明できるように準備しておきましょう。

税務調査の連絡が来たら?当日の対応ポイント

もし税務署から調査の連絡があったら、以下の点を押さえて対応しましょう。

  1. 慌てず、まず顧問税理士に連絡: 日程調整から当日の立会い、調査後の対応まで、税理士に依頼するのが最も安心です。
  2. 誠実に対応する: 調査官の質問には正直に、具体的に答えましょう。ただし、聞かれていないことまで話す必要はありません。
  3. 曖昧な回答は避ける: 不確かな記憶で答えず、「確認して後ほど回答します」と伝えましょう。
  4. 調査官の要求には基本的に協力する: 帳簿書類の提示など、正当な要求には協力しましょう。ただし、業務に支障が出るような過度な要求や、調査範囲外の資料提出を求められた場合は、税理士と相談して対応します。
  5. メモを取る: 調査官の質問内容や指摘事項、提出した資料などを記録しておくと、後で役立ちます。
  6. その場で安易に認めない: 指摘事項があった場合でも、その場で安易に非を認めたり、修正申告に応じたりせず、「税理士と相談して検討します」と伝え、時間をもらいましょう。

まとめ:税務調査は準備と専門家との連携がカギ

税務調査は、多くの経営者にとって気が重いものですが、日頃から正確な経理処理と証憑類の整理・保管を徹底し、税理士と連携していれば、過度に恐れる必要はありません。

むしろ、調査を機に自社の経理体制や経営状況を見直し、より強固な基盤を築くチャンスと捉えることもできます。

とはいえ、調査当日の対応や、指摘事項への反論・交渉には、専門的な知識と経験が不可欠です。税務調査の連絡があった場合はもちろん、日頃の経理処理や節税対策、調査への備えに不安がある場合は、信頼できる税理士に相談することが最善の策と言えるでしょう。

税務調査は、日頃からの備えと専門家である税理士との連携が何よりも重要です。調査に関する不安や、経理体制の見直しについてのご相談は、https://kitamura-tax.com/ までお気軽にお寄せください。

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