離婚を考えるとき、そこにはさまざまな要因が重なり合っていることが多いものだ。
日常の些細なすれ違いが積み重なって我慢の限界を超えてしまったり、子育てや親族との関係、あるいは金銭面の問題などが絡んで夫婦の絆を脅かしている場合もあるだろう。
結婚生活を続けていく中で「もう無理かもしれない」「ここまで我慢したけれど限界だ」という思いに駆られるのは、決して珍しいことではない。
しかし、そうした感情が生まれたとしても、それが即離婚へと直結するとは限らない。
長年連れ添い、人生を共有してきた相手との関係を一度に断ち切るのは大きな決断だ。
離婚という選択を迫られそうになったときこそ、まずは落ち着いて現状を整理し、今後についてじっくり考えてみることが大切である。
ここでは、夫婦が離婚という結末を避けるためにできる対処法について考えてみたい。
離婚という選択に踏み切る前に

コミュニケーションを見直す
まず、離婚を避けたいと思っていても、相手が離婚したがっているというケースもあるかもしれない。
あるいは、互いに「もう修復は難しい」と思いつつも、本心では「できることなら関係を立て直したい」と考えている場合もあるだろう。
いずれにしても、その最初の一歩はコミュニケーションの見直しだ。
夫婦の問題は、ほとんどがコミュニケーション不足や誤解から深刻化していくと言われる。
長く一緒にいるほど、相手への遠慮がなくなって言いすぎてしまったり、相手が何を考えているのかを想像しなくなってしまうものだ。
普段の会話の中で不満を率直に伝えられなくなり、自分でも気づかないうちに小さなイライラや不信感を膨らませていることがある。
ここで大切なのは、相手への期待や要求ばかりを一方的にぶつけるのではなく、自分がどう感じているかを正直に伝え、そして相手の言い分を受け止める姿勢を持つことだ。
意地や感情的な言葉は相手の心を閉ざしてしまう。
それよりも、できるだけ冷静に「自分はこう感じている」「こうしてもらえると嬉しい」といった形で伝えてみることを心がけたい。
問題を切り分けて考える
次に、問題が複数にわたる場合は、それぞれの課題を切り分けて考えるようにしたい。
生活費や貯金、ローンなどの金銭的な問題、子どもの教育方針や育児分担に関するすれ違い、あるいは家事の負担の偏りや親との付き合い方など、すべてがごちゃ混ぜになっていると、どこから手をつければいいのか分からなくなってしまう。
日々の些細な出来事が不満の導火線になり、爆発したときには「もう離婚しかない」という気持ちに追い込まれることもあるだろう。
しかし、一つずつテーマを分けて相手と話し合い、「これは妥協できる」「これだけは譲れない」というラインを互いに明確にすることで、解決策を探りやすくなる。
もちろん、すべてが思いどおりに解決するわけではないが、一歩ずつ進めていく中で「話せば分かり合える部分もある」と実感できれば、離婚を回避する糸口にもなるはずだ。
第三者のサポートを活用する
夫婦だけで問題を抱えていると、冷静な話し合いが難しくなることがある。
感情的な対立が激しいときには、客観的な視点を取り入れられないまま不満や怒りだけが膨張していってしまう。
そこで、必要に応じて第三者の力を借りてみるのも一つの選択肢だ。
カップルカウンセリングや夫婦セラピー
離婚を避けるためにカップルカウンセリングや夫婦セラピーを利用することを検討してみるのは有効な手段となる。
第三者を交えて話し合うことで、お互いの言い分を客観的に整理できるというメリットがある。
とくに、夫婦の問題は当事者だけでは冷静さを保つのが難しく、「自分の方が正しい」という思いにとらわれてしまいがちだ。
専門家は問題を分解し、夫婦それぞれの声に耳を傾けながら、解決へのサポートを行ってくれる。カウンセリングやセラピーは「大げさな感じがして恥ずかしい」「プライベートを他人に話すのは抵抗がある」と感じる人もいるが、海外では夫婦の不和が生じたときに相談に行くのはごく一般的な行為であり、実際に問題解決に役立つ場合が多い。
夫婦関係を再構築する工夫
離婚回避への対処法を考えるとき、ただ話し合うだけではなく、具体的に夫婦関係を見直し、修復するための工夫を取り入れていくことが重要になる。
マンネリを解消する
長年の結婚生活の中でマンネリ化し、お互いの存在に新鮮味を感じなくなることは離婚を考える一因になりやすい。
付き合い始めの頃や新婚当初は相手のちょっとした仕草や言葉にドキドキしていたのに、いつしか「いて当たり前」という感覚になってしまう。
そこに不満や疲れが重なると、「一緒にいてももう幸せを感じられない」と思うようになる。とはいえ、マンネリを解消する方法は必ずしも特別なことばかりではない。
二人だけでデートをしてみたり、改めて感謝や愛情表現を言葉にして伝えるだけでも、関係が変わることがある。
小さな工夫を積み重ねることで、お互いが初期の頃の気持ちを思い出し、「この人を選んで結婚したのだ」という初心に立ち返ることができるかもしれない。
一時的な距離をとる
夫婦間の対立が大きく、生活に支障をきたすほどになっている場合は、物理的に距離をとってみるという方法も考えられる。
離れて暮らしてみることで、自分にとって相手の存在がどれほど大きいものだったかに気づいたり、「やはり離婚よりも修復を目指したい」という気持ちが固まることもあるだろう。
ただし、別居をするのであれば、ずるずると曖昧な状態を続けるのは好ましくない。
あくまでも冷却期間を設けるための一時的な措置と位置づけて、その間に夫婦関係をどうするのか冷静に話し合うのが望ましい。
別居を選択したからといって自動的に問題が解決するわけではないが、自分自身を見つめ直す時間を確保できるというメリットがある。
自分自身を見つめ直す大切さ
離婚を回避するには、まずは「どうして離婚に至るかもしれないと思ったのか」を自分自身でしっかりと振り返り、整理することが必要だ。
結婚相手のここが嫌だ、あそこが嫌だと不満を募らせるだけではなく、自分はどのような姿勢で結婚生活を送ってきたのか、相手にどのように接してきたのかを見つめ直すことで、解決のヒントが見えてくることがある。
相手を変えようとする前に、自分の態度や言葉遣いを改めて検討してみることが大きな転機につながる場合も多い。
もちろん、全てを自分ひとりの努力だけで乗り切れるわけではないが、自分から歩み寄る姿勢を見せることで、相手も素直になりやすくなる。
人は責められると防御本能が働き、心を閉ざすものだ。
だからこそ、自分の思いを伝えると同時に、相手の言い分にもしっかり耳を傾ける姿勢が肝心なのである。
深刻な問題が潜んでいる場合
場合によっては夫婦の間に解決が難しい深刻な問題が潜んでいるケースもある。
たとえばDVやモラハラ、経済的な搾取など、片方が深く傷つけられている関係の場合には、離婚回避を最優先にするのが必ずしも正解とは限らない。
そのような深刻な問題が背景にあるときは、専門機関や役所、弁護士などに相談し、安全や健康を確保することを第一に考える必要がある。
無理に結婚生活を続けようとすることで、さらに被害が拡大する可能性もあるからだ。
離婚はあくまでも最後の手段であるという考え方は多くの人が共有しているかもしれないが、決して「離婚だけは避けたい」と思いつめ、耐え続けるべきだというわけではない。
自分自身や子ども、家族の幸福や安全を脅かすほどの問題があるならば、離婚はやむを得ない選択となりうる。
まとめ
もし互いに修復の余地があり、愛情や敬意を再構築できる可能性があるならば、離婚を回避するためにあらゆる手段を試してみる価値はあるはずだ。
結婚生活は単なる契約ではなく、人と人とが人生を共有し、支え合いながら成長していく営みでもある。辛いと感じる時期もあれば、逆に幸福を深く味わえる時期もある。
その波を乗り越えていくためには、自己を見つめ直し、相手への思いやりを育み続ける姿勢が欠かせない。
少し時間を置いて客観的に考えてみると、離婚が唯一の解決策ではなかったと気づくことも多いのだ。
離婚は人生において大きな転機であり、再スタートに向けて必要な場合もあるが、勢いだけで決めてしまうと後悔を残す場合も少なくない。
今は別れたいという気持ちが勝っているとしても、冷静に状況を判断し、自分や相手の思いを深く知ることで、離婚という結論を避けられるかもしれない。
人生の大きな選択だからこそ、時間をかけて心の声を聞き、二人にとって最善の道を模索することが重要になるはずだ。