こんにちは、ユキコです。あれはもう5年前になるのか……。
大学を卒業してすぐ、何を思ったか突然「スキー場で働きたい!」と熱病に浮かされたように思い立ち、長野県の山奥にある某スキー場でリゾートバイトをした冬のことです。
あれから社会人として揉まれまくった今振り返ってみても、あの冬は本当に濃密で、まるで映画のワンシーンのような、ちょっと信じられないような体験の連続でした。
あの経験は、私の人生観や恋愛観にも大きな影響を与えてくれたような気がします。
今回は、ただの思い出話として終わらせるにはあまりにもったいない、あの特別な冬を、備忘録的にここに書き残しておこうと思います。
妄想成分多めですが、あの時の熱い想い、どうか皆さんに伝わりますように…!
第一章:白銀の世界と、運命の出会い

実家を離れ、長野のスキー場へ向かうバスの中、私は期待と不安で胸がいっぱいでした。幼い頃から憧れていた雪国での生活、そして何より「リゾートバイトで運命の出会いがあるかも…!」という甘酸っぱい妄想が、私を突き動かしていたのです。
到着したのは、想像以上に小さな、でもどこか温かみのあるスキー場でした。降り積もった雪は太陽の光を浴びてキラキラと輝き、まるで別世界に迷い込んだような感覚に陥りました。
私が配属されたのは、スキー場のふもとにある小さなレンタルショップ。仕事内容は、スキー板やウェアの貸し出し、返却、メンテナンスなど、想像以上に体力勝負でした。でも、お客さんの楽しそうな笑顔や、「ありがとう」の言葉に励まされ、毎日が充実していました。
そんなある日、私の運命を大きく変える出会いが訪れます。
「すみません、スキー板を借りたいんですけど…」
そう声をかけてきたのは、彫りの深い顔立ちに、澄んだ瞳が印象的な青年でした。背が高く、肩幅も広く、スキーウェアがまるでオーダーメイドのように体にフィットしていました。一瞬で、私は彼の存在に圧倒され、言葉を失ってしまいました。
「あ、えっと…身長と足のサイズを教えてください…」
緊張で声が震えながら、なんとか彼の情報を聞き出し、スキー板を選びます。その間、彼の視線が私をまっすぐ見つめていて、心臓がバクバクと音を立てていました。
「これで大丈夫です。楽しんできてください!」
そう言ってスキー板を手渡すと、彼はニッコリと微笑み、「ありがとう」とだけ言い残して、ゲレンデへと消えていきました。
その日から、私は彼のことが頭から離れなくなってしまいました。名前も知らない、どこから来たのかもわからない彼。でも、あの澄んだ瞳と優しい笑顔は、私の心に深く刻み込まれたのです。
第二章:雪上のロマンスと、小さな奇跡

それからというもの、私はレンタルショップで働きながら、彼が再び現れるのをひそかに待ち続けました。
毎日、何百人ものお客さんと接する中で、彼の姿を探し求め、一喜一憂する日々。そんな私の様子を見かねた同僚のカナちゃんが、ある日、耳寄りな情報を教えてくれました。
「ユキちゃん、あのイケメン、よくパトロールしてる人たちと一緒にいるの見たよ。もしかしたら、パトロール隊員かも!」
パトロール隊!それは、スキー場の安全を守る、まさにヒーロー的存在。彼がそんな重要な役割を担っているなんて…!ますます彼のことが気になって仕方ありません。
私は、彼の姿を少しでも見られるように、休憩時間には積極的にゲレンデに出て、リフト乗り場やレストラン周辺をうろつくようになりました。そして、ついに!あの日から一週間後、私は彼と再会することができたのです。
彼は、赤いパトロール隊のウェアを着て、仲間たちと楽しそうに談笑していました。私は思い切って、彼の近くまで行き、勇気を振り絞って声をかけました。
「あの…レンタルショップで働いてるユキコです。この間は、ありがとうございました!」
彼は、一瞬驚いたような表情を浮かべましたが、すぐにあの優しい笑顔に戻り、
「ああ、君か!あの時はどうも。僕はケンタ。よろしくね。」
そう言って、手を差し出してくれました。彼の大きな手に包まれた瞬間、全身に電流が走ったような感覚に襲われました。この日を境に、私たち二人の距離は急速に縮まっていきました。
休憩時間には一緒にコーヒーを飲んだり、仕事終わりに食事に行ったり。ケンタは、優しくて、頼りがいがあって、そして何よりも、私を特別な存在として扱ってくれました。
「ユキコは、なんでここで働こうと思ったの?」
ある日の夜、一緒に満天の星空を眺めながら、ケンタが私に尋ねました。私は、子供の頃から抱いていた雪国への憧れ、そして、新しい自分に出会いたいという想いを、素直に打ち明けました。
「そっか…ユキコは、すごく純粋で、真っ直ぐな人だね。」
ケンタは、そう言って、私の頭を優しく撫でてくれました。彼の温もりに包まれ、私は幸せな気持ちでいっぱいになりました。
第三章:嫉妬と、すれ違い、そして…
ケンタと過ごす日々は、夢のように幸せでした。しかし、そんな幸せな時間も永遠には続きません。ある日を境に、私たちの関係に暗雲が立ち込め始めました。
原因は、私の嫉妬心でした。ケンタは、パトロール隊員として多くの人から頼りにされ、女性からも人気がありました。ゲレンデで他の女性と楽しそうに話している姿を見るたびに、私の心は締め付けられ、不安でいっぱいになりました。
「ケンタ、あの女の人、誰?すごく親しそうに話してたけど…」
私は、自分の気持ちを抑えきれず、ケンタに問い詰めてしまいました。
「ただの知り合いだよ。心配しすぎだって。」
ケンタは、困ったような顔で答えます。しかし、私の不安は消えることはありませんでした。それどころか、ケンタの言葉を素直に受け入れられず、ますます彼を疑うようになってしまいました。
そんなある日、事件が起こります。スキー場の近くのバーで、ケンタが他の女性と楽しそうに飲んでいる姿を目撃してしまったのです。その瞬間、私の頭は真っ白になり、感情が爆発してしまいました。
私は、何も考えずにバーに飛び込み、ケンタに詰め寄りました。
「どういうことなの!?他の女と浮気してるの!?」
私の突然の行動に、ケンタは驚き、そして怒りをあらわにしました。
「誤解だ!彼女はただの友達で…」
「言い訳しないで!もう信じられない!」
私は、ケンタの言葉を遮り、一方的に責め立てました。そして、そのままバーを飛び出し、雪の中を泣きながら走り去りました。
第四章:失って気づく、大切なもの
ケンタと喧嘩別れして以来、私は抜け殻のような状態でした。仕事にも身が入らず、毎日が灰色に見えました。
「ユキちゃん、大丈夫?元気ないね…」
心配してくれる同僚たちにも、うまく返事ができません。
「ケンタと…喧嘩しちゃって…」
私は、ようやく重い口を開き、事情を説明しました。
「ユキちゃん、それは…でも、ちゃんとケンタと話し合った方がいいよ。誤解したまま別れるなんて、絶対後悔する。」
同僚の言葉に、ハッとさせられました。私は、自分の感情に振り回され、ケンタの気持ちを全く理解しようとしていなかったことに気づいたのです。
私は、ケンタに謝りたい、もう一度ちゃんと話し合いたいと思い、彼の元へ向かいました。しかし、彼はすでにパトロールの仕事で、山の上に行ってしまったとのこと。
私は、いてもたってもいられず、スキーを履いて、彼の後を追いかけました。しかし、慣れない雪山で、私はすぐに遭難してしまいました。
吹雪が激しくなり、視界はほとんどゼロ。寒さと恐怖で、体は震え、意識が朦朧としてきました。
「もうダメかもしれない…」
そう思った時、遠くから私の名前を呼ぶ声が聞こえてきました。
「ユキコ!ユキコ!」
それは、ケンタの声でした。彼は、私を探しに来てくれたのです。
「ケンタ…!」
私は、力の限り叫びました。そして、ついにケンタは私を見つけ出し、無事に救出してくれたのです。
「馬鹿野郎!なんでこんな無茶なことをするんだ!」
ケンタは、私を抱きしめながら、怒りと安堵が入り混じったような表情で言いました。
「ごめんなさい…ケンタに謝りたくて…」
私は、涙を流しながら、自分の過ちを認め、謝罪しました。ケンタは、そんな私を優しく抱きしめ、
「もういいんだ。無事でよかった…」
そう言って、私の額にキスをしてくれました。
第五章:白い粉が教えてくれたこと
あの事件以来、私たち二人の絆は、より一層深まりました。ケンタは、私のことを理解しようと努めてくれ、私も、自分の気持ちを素直に伝えることができるようになりました。
そして、リゾートバイトの期間が終わり、私たちはそれぞれの場所へ帰る日がやってきました。別れの時、ケンタは私に一枚の手紙を渡してくれました。
「これは、僕の連絡先。ユキコ、絶対に連絡してきてね。」
私は、涙をこらえながら、
「うん、絶対に連絡する!ケンタも、元気でね。」
そう言って、彼と別れました。
手紙には、ケンタの連絡先と、短いメッセージが書かれていました。
「ユキコ、君と出会えて、本当に良かった。君は、僕にとって特別な存在だよ。また会える日を、楽しみにしている。」
私は、そのメッセージを何度も読み返し、ケンタとの思い出を胸に、新たな一歩を踏み出しました。
あの冬、スキー場で過ごした時間は、私にとってかけがえのない宝物です。ケンタとの出会い、そして別れを通して、私は、愛すること、信じること、そして自分自身と向き合うことの大切さを学びました。
そして、もう一つ、あの冬が私に教えてくれた大切なことがあります。それは、「白い粉」の本当の意味です。
リゾートバイトを始める前、私は「白い粉」といえば、スキー場の美しい雪景色を思い浮かべていました。しかし、あの冬を経験した今、「白い粉」は、私にとって、もっと深い意味を持つようになりました。
それは、純粋な気持ち、真っ直ぐな想い、そして、人を愛することの喜び…そんな、心が温かくなるような、キラキラと輝く感情の結晶のようなもの。
あの冬、私は「白い粉」に包まれ、たくさんのことを学び、成長することができました。そして、今でも、あの美しい雪景色と、ケンタの優しい笑顔を思い出すたびに、胸が熱くなるのを感じます。
この先、どんなことがあっても、あの冬の思い出は、私を支え、導いてくれることでしょう。
ありがとう、ケンタ。ありがとう、白い粉。そして、ありがとう、忘れられないあの冬。